漢方コラム
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Vol.311 治病求本〜漢方薬を用いるときの治療原則〜
《根本的に治すため、本質を探り、原因を取り除く》
病気には必ず、症状とその症状を作り出す原因があります。症状の原因になった本質をつかむことが根本的な改善の糸口になります。
例えば、子宮筋腫ができる理由を東洋医学的に説明すると、骨盤内の血流障害といえます。冷えや食事、そのほかの原因によって骨盤内の血の巡りが悪くなると、細胞に酸素と栄養が運ばれにくくなり、二酸化炭素と老廃物が溜まりやすくなります。これは子宮筋腫だけに限らず、ポリープやイボ、内膜症、癌などのできもの全般に共通します。
子宮筋腫は背景に冷えがあることが多いです。子宮筋腫を切除したり、ホルモン剤で小さくしたとしても、体質的背景が何も変わっていなければ、またできてしまう可能性があります。しっかりと冷えを治し、骨盤内の血の巡りを良くして常にきれいな血液が子宮に届くようにアプローチすることが再発防止につながります。
《冷え・血虚など便秘の原因も人それぞれ》
便秘の場合、腸のぜん動運動が弱くて便が出ないタイプもいれば、ストレスにより便が出ないタイプ、腸が冷えていることにより便が出ないタイプ、食べ過ぎなど腸に負担がかかり過ぎて便が出ないタイプなど原因はさまざまです。女性に多いタイプは血虚による便秘です。血液が足りていない人は肌が乾燥するように腸壁の潤いも保てません。血液が増え、血液の持つ滋潤作用が高まれば便秘は改善します。下剤だけに頼らず、血虚体質を改善するための漢方薬を用いていきます。これを「治病求本(ちびょうきゅうほん)」といい、「病を治すには本質を探る」ということを大切にしています。
《急性期・慢性期で臨機応変に順番を変更》
症状がとても強い時や急な症状の場合は順番が重要です。火事が起きている時にせっせと土台から組みなおしていても火は消えませんから、火を消してから土台作りをする必要があります。
例えば皮膚炎が酷い時、ひとまず火を消すための消炎作用のある漢方薬で炎症を鎮め、それから、再び炎症が起きないようなアプローチをしていきます。
風邪をひいたときは、@風邪をいち早く追い払い、A風邪症状を早く直し、それからB風邪をひきやすくなっている体の免疫力を高めていく必要があります。ただし、抵抗力の低下が甚だしい時は、追い払うアプローチと抵抗力を高めるアプローチを同時に行います。これらの治則は漢方薬を用いる時にはとても重要なポイントとなり、より本質的に、健康的に回復していくことにつながります。