漢方コラム
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Vol.302 自然治癒力~症状は悪いように見えて、治すために必要な過程~
《風邪の発熱 体は熱を上げて治そうとしている》
人間には自然治癒力が備わっています。本来人間が持っている病気を治す力は、表に出ている症状を見ると悪く感じてしまうかもしれませんが、実は治すための過程であることを忘れてはいけません。
例えば、風邪の発熱です。なぜ熱が出るかというと、まず「病原菌が外から侵入してきたぞ」と免疫細胞が侵入者発見の合図を脳に送り、体温が上昇します。ウイルスや菌などの病原体は低温で繁殖するという特徴があるため、発熱により病原体の増殖を抑制します。
また、白血球の働きが活性化するので病原体をやっつけてくれる力も高まります。体は熱を上げることによって病原体と戦い、風邪を治そうとしているのですが、しんどいからといってすぐに解熱剤を使うと、熱が下がって体は楽になりますが、病原体が消えたわけではないのでまた熱がぶり返したり、すっきり良くならなかったりします。
ぐったりしている、症状が酷い、3日以上熱が続く、けいれんが5分以上続く、生後4か月未満の赤ちゃんで熱が続く、持病がある場合などはすぐ医療機関にかかったほうが良いですが、通常の風邪で発熱した場合にすぐに解熱剤を使うことに関しては、考える必要があります。
《抗生剤を繰り返し使うと腸内環境が悪くなる⁉》
風邪をひいてすぐに抗生剤を使うことを繰り返していると、腸の環境が悪くなり、腸で作られている免疫細胞がうまく作られなくなります。すると、どんどん虚弱になり、ますます風邪をひきやすい体になってしまいます。人間に備わっている治そうとする力を必ずしも悪い症状とみなさないという視点は重要で、自然治癒力を妨げるような過度の医療介入や薬の使い過ぎには、注意が必要です。
《体からのサインを正確に受け取る》
症状を抑え込む出口の治療だけではなく、原因に近い入口のアプローチもどちらも重要です。症状というのは、治そうとする反応でもありますが、「体が危険な状態にありますよ」というサインでもあります。例えば、ニキビや湿疹ができているときに悪い物を出してくれているんだなと思っても、体の中に悪さをするものが入り続けていたら排泄が追い付かなくなり、どんどん悪化します。血圧が高くなるのは血液を隅々まで運ぼうとしてくれているからなんだと安心してお酒、たばこ、高カロリー食を続けていると、血管はどんどん硬くなり、血液も汚れ、血圧はもっと上げなければいけないことになります。体からのサインを正しく受け取り、ベストな対応ができることが健康を保つポイントですね。