漢方コラム
◀
21/313
▶
Vol.294 汗のかき方〜汗をかいてスッキリするのはOK、グッタリするのはNG 〜
《内臓に元気がない気虚タイプの人は要注意》
汗をたくさんかくことは、一見良いことのようにみえます。しかし、体質によっては良いとは言えない場合があります。運動をしてたくさん汗をかいて、スッキリする気持ちの良い汗は良いのですが、ちょっと動いたり、温かい食べ物を食べると途端にダラダラ汗をかいたり、汗をかいた後にスッキリではなくグッタリしてしまう汗は良い汗ではありません。
汗をかいた後に疲れを感じるのは「気虚(ききょ)」の汗といい、内臓の元気がなく、体に気が不足しているタイプです。疲れやすい、だるい、胃腸が弱い、もたれやすい、小食もしくは痩せの大食い、水太りタイプ、胃下垂、持久力がない、というようなタイプです。このような気虚体質の人が激しく汗をかくと、余計に疲れ、代謝が落ちてしまいます。
《五臓の脾(消化器系)が弱まり、汗が漏れ出る⁉》
気虚タイプの人は毛穴をキュッと引き締めておくことができず、汗が漏れ出てしまっています。五臓の「脾(ひ:主に消化器系)」との関係が深く、この脾には「固摂(こせつ)作用」といい、体からいろいろなものが漏れ出ないように保っておく力があります。脾の力が低下していると、汗以外にもオリモノ過多、出血などのトラブルも起こりやすくなります。
こうした状態を「脾不統血(ひふとうけつ)」といい、生理のときにダラダラと出血が続いてなかなか治まらなかったり、生理期以外に出血があったり、すぐに血管が切れて内出血が起こりやすかったりもします。内臓機能の低下による出血に用いる漢方の専門処方があり、漢方薬でも出血コントロールができます。気虚の汗っかき体質の人には内臓の気を高め、収斂(れん)作用のある漢方薬などを用いて体質改善をはかります。
《水分や栄養素の補給は体温に近い温度のもので》
汗はただの水分ではなく体に有用な液体です。かけばかくほど老廃物は排出されますが、体に必要な栄養素も流れ出てしまうことになります。もともと疲れやすい気虚体質の方は特に汗のかき過ぎに要注意で、汗のかき過ぎによって血液も消耗し、血液不足につながることもあります。
このタイプは岩盤浴やサウナ、ホットヨガなどで積極的に汗をかくことも注意して行いましょう。激しく汗をかいた後に、冷たいお水をガブガブ飲むと、胃腸機能が低下し、悪循環に陥ります。女性では生理トラブルが出る場合もあります。ほどよく汗をかく運動が向いており、運動した後はなるべく体温に近い温度のもので水分補給をすると良いでしょう。