漢方コラム
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Vol.289 水分の摂り方〜水を1日2リットル摂取はちょっと待って!〜
《水湿(すいしつ)、痰湿(たんしつ)タイプの人は要注意》
お水を1日2リットル飲むとよい、ということを耳にすることがあると思います。
しかし、これは、合う人には合うけれど、合わない人が実践すると大変なことになります。
水分代謝が悪く、体に余分な水分を溜め込みやすい「水湿(すいしつ)、痰湿(たんしつ)」タイプの人は1日2リットルも飲んではいけません。
「水湿」「痰湿」とは、体に湿気が溜まっていて停滞していることを指します。体に余分な水がたまると、むくみ、めまい、頭重感、頭痛、体が重だるい、憂鬱、おりもの過多、腹部膨満感、食欲不振、など、体のあちこちに異変や不調が起こることがあります。
《冷たいもの、甘いもの、油っこいものの摂り過ぎはNG》
水分過多による不調の主な原因は二つあります。一つは必要以上の水分が体に入ったこと。もう一つは体の水はけが悪いことです。体の水分代謝に関わるのは肺・脾(ひ/消化器系)・腎です。これらの臓器の働きが弱いと、うまく水をさばけず、体に水がたまってしまいます。
腎と水の関係はイメージがつきやすいと思いますが、肺と胃腸も密接に関わっています。特に胃腸は五臓の中で除湿器の役割をする臓器なので、胃腸の弱い人は水分代謝が悪くなりやすく、梅雨が苦手という傾向があります。湿度が高くなる梅雨は、体が重だるくなってやる気が出なくなったり、めまいが起きたり、胃腸の調子が悪くなりやすいのです。元々は胃腸虚弱でなくても、冷たいものや甘いもの、油っこいものの摂りすぎ、過食などで胃腸の気を低下させると、痰湿になりやすくなってしまうのです。
《漢方で弱点に応じた調整も可能》
このように水はけが悪い体質の人は、先に水はけを良くしておくことが重要です。水はけが悪いのにたくさんの水が体に入ってくるとうまくさばけず、余分にたまってしまうのです。それが冷たい水なら、ますます体は冷えて水分代謝が悪くなり、血行を良くするつもりで水分を摂っていたはずが、むしろ循環を悪くしてしまいます。
舌をみて、舌の上に苔が分厚く生えている人、舌が大きく膨らんで歯の痕がついている人は水分補給はほどほどに、のどが乾いてから飲むのがベスト。余分な水分をきちんと排泄することを意識しましょう。汗をかくことも良いですし、貝類、海藻、根菜類、キノコ類、冬瓜などウリ科のもの、こんにゃく、ハト麦、緑豆(もやし、はるさめ)など体の余分な水分を排出してくれる働きのある食材を摂るのも良いです。
漢方薬の力を借り、体の余分な水分をさばき、肺・脾・腎の弱点に応じてうまく水分調整ができるよう体の機能を整えることも可能です。