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漢方コラム 35/313

Vol.280 熱中症予防には「酸味」+「甘味」

≪屋外で距離を確保できる場合はマスク無しも≫

熱中症は暑さによって体温調節機能である汗が体内から異常に失われることで体内の水分が不足した場合や長時間暑さにさらされることで体温調節機能が乱れ、体外に熱を放出できなくなり体温上昇を引き起こすことが要因です。

特に今年は新型コロナによりマスクをつけていることにより熱中症リスクが高まりやすいことが心配されます。厚生労働省のHPにはマスクの着用により、心拍数や呼吸数、血中二酸化炭素濃度、体感温度が上昇するなど体に負担がかかることがあるため、屋外では人と十分な距離が確保できる場合にはマスクを外すようにとの忠告がなされています。マスクをしていないと人の目が気になって、息苦しく感じている時も無理してつけているという方も多いようですが、高温や多湿環境下でのマスク着用は酸欠や、マスク内での雑菌繁殖などの問題にも注意せねばなりません。


≪理にかなった甘酸っぱさ「レモンのはちみつ漬け」≫

失った体液をいち早く補うには『酸味』と『甘味』がポイント!『酸甘化陰(さんかんかいん)』といい、酸味と甘味の組み合わせは陰分(体液、体の潤い)を増やす働きがあります。

お水ではすぐに体液にならないし、スポーツドリンクは糖分が多い、緑茶や紅茶、コーヒーなどのカフェインを含むものやアルコールには利水作用があるため余計に体の水分を外に排泄してしまう可能性があります。

簡単にできるものとしてはレモンのはちみつ漬け。スポーツ選手がレモンやレモンのはちみつ漬けをかじっていたりするのはとても理にかなっています。水や炭酸水、お湯で割って飲むと良いです。酢を使ったヴィネガードリンクもよいですし、元々酸味と甘味を兼ね備えているトマトやフルーツも◎。暑い時は、酢豚やマリネのように、料理を甘酸っぱく仕上げるとよいです。

≪構成生薬が少ないほどシャープに効果を発揮≫

漢方薬にもこの『酸味』と『甘味』の組み合わせによって成り立つ処方があります。

「生脈散(しょうみゃくさん)」といい、その名の通り脈をみなぎらせ疲れをとる漢方薬です。日本では「麦味参顆粒(ばくみさんかりゅう)」という処方で手に入り、人参、五味子、麦門冬の三味から構成される漢方薬です。人参と麦門冬の甘味、五味子の酸味の組み合わせでいち早く体液を増やし、人参の心肺機能を高める作用によって滋養強壮に働きます。また、五味子の酸味は収斂作用があるため、汗のかきすぎを防ぎます。スポーツする方や汗をかく時期にはよく活用される漢方薬です。

漢方薬は構成されている生薬の数が少ない程、シャープに効きます。これからの時期にはこのような処方を知っておくと便利です。
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