漢方コラム
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Vol.278 新型コロナウイルスで疲れる心と身体〜中医学での知恵で耐えれる体に〜
≪不安やストレス、精神的な疲れが肝のトラブルに≫
外出自粛に伴い、不安やストレスを抱えて生活をしていると、いつも以上に疲れ、ピリピリしてしまうものです。こんな状態が続くと、体にも影響が出てきます。
中医学でいう「肝」は、肝臓の機能も含みますが、
○目や筋肉
○爪など各器官や組織とのつながり
○精神情緒の安定
○自律神経 を介した調節機能
○血流調節-など機能的な働き
を含みます。
そのため、精神的に疲れている場合は「肝」のトラブルが起こりやすくなります。
例えば、まぶたがピクピクする症状。特に女性に多く見られます。目や筋肉は肝と深い関係があるため、ストレス過剰の場合、顔の筋肉、特にまぶたが痙攣(けいれん)します。肝臓の血液不足で起こりやすくなるため、女性に多い傾向があります。
≪不安定な精神の背景に「血虚」≫
精神的に不安定になりやすい背景には、血虚(けっきょ)が多くあります。
血虚とは、血液検査で異常が出なくても、
○立ちくらみがする
○爪が割れやすい
○髪が抜けやすい
○生理の血が少ない
○下まぶたの内側や舌が白っぽい
など血の不足症状が出ている状態。
女性は毎月生理があるので、多くの女性が血虚傾向にあるといえるでしょう。
血虚の人は、
○眠りが浅くなる
○夢を多く見る
○不安になる
○イライラする
○動悸がする
○緊張する
といった症状が起こりやすくなります。
≪十分な血量、気の巡りなど生活養生で肝を整えて!≫
先日、イライラし食欲をコントロールできないという相談がありました。舌が真っ赤で、肝熱が強い状態。肝の興奮を抑えてイライラを鎮め、血を補う働きのある漢方薬2種類を提案。一か月後、イライラが減り、ドカ食いもなくなり、舌の赤みも改善しました。
ある方は、歯茎が痛いとご相談。歯茎は、中医学では脾胃(ひい/消化器系)と深く関係します。肝の気の巡りを整え、胃腸に良い漢方薬で痛みが治まりました。
肝脾不和(かんぴふわ)といって、ストレスがあると食欲が低下し、胃が痛くなるなど胃腸系にダメージを受けます。この方の場合、脾胃と関係の深い歯茎に症状が出たようです。
ほかにも下痢と便秘を繰り返す、不眠、頭痛、動悸、めまい、生理痛、生理不順、呼吸しづらい、喉のつまりなど、精神的ストレスはさまざまな症状として現れます。精神の安定は気持ちの持ち様や持って生まれた性格だけでなく、内臓の力や十分な血の量、気の巡りなどによって培われます。基本は日々の生活養生にあります。こんな状況下こそ、心穏やかに、そして心身一如を心がけましょう。