漢方コラム
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Vol.270 丹参(たんじん)のチカラ 〜活性酸素の悪影響を和らげる生薬〜
あらゆる慢性病の背景に「瘀血(おけつ)」があります。瘀血とは血流が滞ること。血液の流れが悪くなると、その部分の細胞に酸素と栄養が行き渡りにくくなり、老廃物と二酸化炭素が回収されにくくなります。すると、炎症を起こしたり、できものができたり、機能が低下したりして、病気を引き起こしてしまいます。瘀血改善を意識する生活をすることは病気の予防においてとても重要です。
「病院からもらった血液サラサラの薬を飲んでいるから大丈夫!」という方がたくさんいらっしゃいます。血液をサラサラにする薬は血をかたまりにくくする働きはありますが、血行促進作用があるわけではありませ ん。微小循環や冷え性の改善などとは別の話なのです。
瘀血を引き起こす原因は冷え、寝不足、食事の不摂生、加齢、虚弱体質、血液不足などで、生活養生に気を付けることが何よりも大切です。それでも追い付かないときに漢方生薬の力を活用します。細胞は活性酸素により老化が進み、特に現代人は過労やストレス、化学物質など活性酸素を多く産生させてしまう現状にあります。
「瘀血(おけつ)」を改善する生薬では「丹参(たんじん)」が代表的で、優れた働きをします。丹参を主成分とする漢方製剤の実験において、活性酸素をすばやく減少させ、抗酸化作用があることが確認されています。優れた微小循環改善作用が認められているので、腎臓病や肝臓病、心臓病、脳疾患、糖尿病合併症、うつ病、婦人科疾患、不妊症などさまざまな分野に応用されています。丹参は現代人が知っていて損はない、万病予防生薬の一つです。