漢方コラム
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Vol.261 腎が体の司令塔A〜発育、成長、老化に大きな影響を与える腎〞〜
前回、脳ではなく腎臓が体の司令塔であり、生命力をつかさどる源だという中医学(中国伝統医学)の考えと同様のことが現代医学の研究で分かってきていること、西洋医学、中医学ともに「健康寿命の要は腎である」ことが共通認識であるということについて書きました。
腎の働きは多岐に渡り、成長・発育・老化・寿命をコントロールしています。前回も呼吸は肺と腎臓でするということを書きましたが、他にも腎臓が担う働きはたくさんあります。中医学では腎臓が血液を取り仕切ると考えます。心臓から送られた血液が糸球体でろ過され1日180ℓもの原尿が作られます。そこから必要な物質の再吸収と老廃物の排泄を繰り返しています。そして、体内の血液成分の調整や造血ホルモンの分泌促進など、血液を管理しているということが分かってきました。
中医学では「腎は骨を司り、骨髄の造血機能に係る」としています。現代医学においても、必要に応じて腎臓から骨にメッセージ物質「 EPO 」が出され、骨髄の造血を促し、赤血球の割合を調節するとの結果が明らかになったようです。また、腎臓は他の臓器とも連絡を取り合い、影響し合っていることも分かってきています。
腎は生命力の源であり、子供の発育、成長期、妊娠期、更年期、老年期などそれぞれの時期を支えています。腎臓は我慢強い臓器なのでなかなかサインを出しません。ですから日々の生活養生が重要です。中医学には「補腎」という考え方があり、漢方薬には補腎薬が豊富にそろっています。生理不順、不妊症、更年期障害、骨粗鬆症予防などにも補腎薬が活躍します。