漢方コラム
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Vol.224 脾臓とは違う「脾」の働き〜出血や内臓下垂にも関係が?!〜
中医学で「脾(ひ)」とは脾臓のことではなく、胃腸(消化機能)を指します。
脾の生理機能は胃腸の働きのほかに、気や血を生み出したり、統血作用といって血が漏れ出るのを防ぐ役割もあります。脾が機能低下すると、内臓の働きが悪くなったり、貧血、出血などのトラブルが起こります。
出血との関係は意外かもしれませんが、非常に密接です。例えば、月経が7日以上ダラダラ続く原因はいくつか考えられますが、疲れやすく、胃腸が弱いという脾気虚(ひききょ)タイプの人は「脾不統血(ひふとうけつ)」といい、血が漏れ出る現象が起こります。この場合は脾を強化し、血を統血する漢方処方でダラダラ出血が治まります。月経過多以外にも、血便、血尿、鼻出血、不正出血、皮下出血などとも関係していることが多く、脾気虚体質による出血であればこの漢方処方で良くなります。
また、脾の力が弱い人 は気が不足し、筋力も弱 いため、内臓を定位置に キープしておくことができません。例えば胃下垂や子宮下垂、遊走腎、脱肛などです。これを「中気下陥(ちゅうきかかん)」といいます。このタイプは午後にならないと元気が出ない、ボーっとしやすい、物忘れ、疲れやすい、便意が頻繁もしくは便が出るまでに時間がかかるなどの症状があり、体の隅々までうまく気血が行き届かない傾向にあります。笑うと歯茎が出る人や寝ている時にまぶたが半開きの人もこのタイプですね。中気下陥に関しても昇提作用のある漢方処方が体質改善に役立ちます。