漢方コラム
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Vol.209 いろいろなタイプの耳鳴り「上」〜耳だけでなく、体全体をみて原因を探る〜
耳鳴りは、ひどくなると一日中鳴っていて苦痛なものです。耳の中で、キーンという高音のものからセミの鳴き声、鐘の音、風の音、水の流れる音などいろいろな音が聞こえます。耳鳴りは時間が経てば経つほど治りにくいとされ、治療も長期戦が多くなります。
中医学では、耳鳴りは五臓と密接な関係があると考え、体を総合的に見て原因を探ります。耳鳴りにもいろいろあり、▼疲れると強くなる耳鳴り、▼ストレスにより悪化する耳鳴り、▼風邪をひくと起こる耳鳴り、▼更年期に起こる耳鳴り、▼加齢による耳鳴り―もあります。それぞれに用いる漢方薬は異なり、滋養が必要なもの、詰まり〞 を通すことが必要な場合もあります。そのため、問診が欠かせません。
60 代男性が「加齢による耳鳴りに効く漢方薬が欲しい」と来店され、問診してみると、耳鳴りは3か月前からで耳鳴りの音は高く強く、怒ると症状が悪化するとのこと。偏頭痛や目の充血があって、顔も赤い。とても精力的に活動されており、舌は赤く苔が黄色っぽい、という状態でした。
これは加齢によるものではなく「肝火上擾」による耳鳴りです。肝とかかわりの深い胆の経絡は耳をまとう形で分布しており、ストレスと関わりの深い 「肝」の気が上逆すると耳の症状が現れます。初期は耳鳴りがし、徐々に聞こえなくなっていくことが多いとされます。この方には肝火の上昇を抑え耳の通りをよくする漢方薬と、血流を良くする漢方薬をお渡ししたところ比較的早く改善がみられました。(「下」へつづ く)