漢方コラム
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Vol.178 病気の深さをみて一人ひとりに合った漢方処方で元気に
東洋医学では病気の深さを「表裏(ひょうり)」、つまり体の表と裏で表現します。風邪のような頭痛、発熱、悪寒、こわばりなど体の表面に現れるものは表証(ひょうしょう)。便秘や下痢のような消化器系疾患など体の深部や臓腑の症状は裏証(りしょう)といいます。
風邪などの表証は早めに病邪を追い払い、体の内部に侵入させないことが重要で、症状に応じた「解表薬(げひょうやく)」という漢方薬を使い分けます。ここでうまく対処できれば半日かからずに治せます。解表薬の代表は葛根湯。葛根湯はゾクゾク寒気がする風邪の初期に使います。喉の痛みや熱っぽいとき、インフルエンザのような高熱のでる場合は葛根湯は逆効果になるため、天津感冒片が手元にあると便利です。天津感冒片は錠剤なので、顆粒タイプの涼解楽は錠剤がのめないお子様などには大変重宝します。我が家でも手放せない常備薬です。
風邪がこじれてしまった場合、病邪が表と裏の間にとどまる「半表半裏(はんぴょうはんり)」の状態になります。悪寒や発熱など表の症状と、吐き気や腹痛などの裏の症状を併せ持ちます。この場合は小柴胡湯や柴胡桂枝湯などの柴胡剤を用います。このときに表証や裏証の漢方薬を用いると病気がこじれるので注意が必要です。「病気がどの深さにいるか」によってきちんと漢方薬を使い分けることが重要です。
風邪をひくと栄養剤を飲んだり、栄養たっぷりの食事を摂ろうとしてしまいがちですが、これは泥棒が入った後に家の鍵をかけるようなもので、栄養をつけるのは回復期が良いでしょう。