漢方コラム
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Vol.141 体のバランスを整える”補”と”瀉”の考え方
漢方薬を用いる時は、まず体質を探り体のバランスを見ていきます。問診の他、舌を診たり、声の大きさや顔色、肌質や性格面もすべて必要な情報になります。重要な考え方の一つに「補(ほ)」と「瀉(しゃ)」があります。
「補」とは体に足りないものを補う、ということです。立ちくらみがあり爪が割れやすく生理の経血の量が少ないという方は「血」の不足があります。この場合は「血」をしっかりと補うような「当帰(とうき)」などに代表される生薬を用いた「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)」などの漢方薬を用います。「瀉」とは、体にとって余分なものを取り除く、ということです。
足がむくみ、頭重感があり、便がゆるい、などという場合は体に余分な水分が溜まっている状態です。この場合は、「茯苓(ぶくりょう)」や「白朮(びゃくじゅつ)」などに代表される利水作用のある生薬を用いた「五苓散(ごれいさん)」などの漢方薬を用います。
このように体に何が必要で何が余っているかを見極め、体のバランスを取り「中庸(ちゅうよう)」の状態にすることが健康の基本と考えます。「中庸」とは「ほどほど」という意味でもあります。食やサプリメントでも言えることで、どんなによいものでも摂り過ぎは毒になります。
栄養価ばかりを見ていると「補」中心になってしまいますが、現代人の多くは飽食で食品添加物の摂取も多いため、毒出し(デトックス)が重要です。高温多湿の時期、夏野菜には体にこもった熱を冷ます働きや、きゅうりやスイカのように熱を利尿作用のあるものが多く、毒出しになります。葉野菜や海藻類も毒出しになります。