漢方コラム
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Vol.111 「冬は虫、夏は草」効果の高い『冬虫夏草』
《身体機能を整え、副作用ない効能の宝庫》
「冬虫夏草」は字の通り冬は虫、夏は草の形態をしています。コウモリガの幼虫に寄生した菌が冬期に虫の体内で菌糸を増やし、夏期に虫の頭部から発芽して棒状の菌核を形成して草になる非常に珍しい生物です。
冬虫夏草の効果は高く、中国では古くから滋養強壮、不老長寿の妙薬として珍重されてきました。チベットの15世紀の薬物書『甘露宝庫』にも「すべての身体機能を整え、副作用がなく効能の宝庫である」と記されています。長い歴史の中で経験的に用いられてきた薬草や漢方薬の効果は近年、科学的に実証されることが多く、世界中の注目を集めています。
1990年代、世界の陸上界で活躍した中国の馬軍団の選手たちが冬虫夏草を毎食食べていました。心臓と肺の機能を高めることで運動能力を高め、疲労回復を早める効果があります。非常に高価なので常食に限りはありますが、現在ではさまざまな漢方薬や健康食品に用いられています。
馬軍団は同時に「生脈散(しょうみゃくさん)」という漢方スープを飲んでいたというので、「さすがだなあ」と思います。「生脈散」は、心肺機能を高めるとともに、滋養強壮、失った汗をすぐに補う作用などがあり、スポーツする方にはうってつけの漢方薬です。中国の中医医院に研修に行った時には生脈散を点滴に使っていました。日本では「麦味参顆粒(ばくみさんかりゅう)」という名で手に入ります。私もちょっと疲れた時に飲みます。日常、用いるにはこちらのほうが使いやすいでしょう。