漢方コラム
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Vol.90 喉のつかえ〜気のつまり〜
《『気持ち』が”疲れて”いませんか?ストレスが引き起こす目に見えない病》
「喉の奥に違和感があり、玉のようなものがつかえているが、出てこない」。このような症状を東洋医学で「梅核気(ばいかくき)」といいます。一般的にヒステリー球ともいいます。梅核とは梅干しの種のことで、それが詰まったように感じても、実際には何も無い状態。▼強いストレス、▼イライラ、▼落ち込み−など精神的な負担が大きい人によく見られます。
比較的女性に多く、古くから知られた疾患で、中国の古典『金匱要略(きんきようりゃく)』にも記載されています。このような目に見えない、検査でもわからない症状の改善に東洋医学が力を発揮する場合は多々あります。
では、実際には無い喉の異物は、どこからくるのでしょう? 気の流れを調節しているのは「肝」ですが、ストレスを受けると肝の気の流れを調節する機能が悪くなり、体に余分なものをため込みやすくなるというのが東洋医学的な考えです。体にたまった余分なものを「痰飲(たんいん)」といい、「痰」は川の底にへばり付くヘドロのようなものでなかなか取れません。痰は喉からペッと吐きだす痰だけでなく、体の中に残っているものも全て含まれます。
「飲」は痰ほどの粘着性はありませんが、体に長く停滞している水分です。これら、痰飲が引き起こす病気はたくさんあり、めまいや動悸、不眠、精神障害、胃腸障害、喘息などさまざまです。中国伝統医学では「怪病は痰からくる」ともいわれています。
梅核気の代表的な漢方薬には「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」があり、気の流れを整え、去痰(きょたん:痰を取り去る)の働きがあります。その他にも、様々な漢方薬があり、その方の体質や体調によって合うものを用いることが大切ですね。