漢方コラム
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Vol.84 食べ物の性質
《体を温めたり、冷やしたり…食べ物が体に働きかける力》
漢方では食べ物に関して独特の捉え方をしています。食べ物や生薬には『熱』『温』『涼』『寒』があり、体を温めたり冷やしたりする性質があるという考え方です。体が冷えている人には温めるものを用い、体に熱がこもっている人には熱を取り除くものを用います。
調理法では「揚げる」→「炒める」→「焼く・煮る・蒸す」→「茹でる」→「生食」の順番で温性(体を温める)から涼性(体にこもった熱を冷ます)に変わります。そのため、同じ食材でも調理法によって性質が変化します。
例えば、体を冷やす大根は、発熱時に大根おろしで食べると良いですが、冷え性の人が大根おろしを常食しているとさらに冷えを進めてしまいます。しかし、煮ると涼性から平性(涼にも温にも偏らない中間のもの)に変わり、冷え性の人にも害がなくなります。ふろふき大根にして温性の生姜を使った生姜味噌で食べれば、冷え性にぴったりの料理になります。
また、漢方では食材を季節によっても使い分けます。夏に熱性食品を摂りすぎると、のぼせたり吹き出物が出やすくなったり、便秘がちになってしまいます。冷え性の人が涼性や寒性の食品を摂ってはいけないということではありません。好きなものばかりに食材が偏らないように心がけ、それぞれの体質を補う食品の割合を多めに摂ることが大切です。
熱性食品 唐辛子、山椒、シナモン、クローブ、八角、羊肉など
温性食品 いわし、えび、かぼちゃ、栗、かぶ、玉ねぎ、生姜、
ニラ、もち米、桃、みかん、番茶など
平性食品 しいたけ、もやし、人參、オクラ、小松菜枝豆、空豆、
里芋、大豆、米、ジャガイモなど
涼性食品 豆腐、セロリ、アボガド、緑豆、大根、蛤、しめじ、
春菊、なす、トマト、みょうがなど
寒性食品 カニ、あさり、トマト、冬瓜、昆布、白砂糖、緑茶、
ゴーヤ、こんにゃく、バナナ、柿など