漢方コラム
◀
239/313
▶
Vol.75 夜になると手足がほてる
《熱もないのに、妙に手足が熱い》
夜になると手足がほてり、特に足の裏が熱くなってどこか冷たいところに押しつけたくなる…という症状。この症状を経験された人は意外に多いようです。かといって熱はなく、手のひらや足の裏だけが妙に熱く感じるという奇妙な症状です。病院で検査しても異常なしと言われてしまいます。
実はこれ、漢方医学で説明がつきます。「陰虚(いんきょ)」という体質が関係しています。水分は陰であらわされ、それが不足(虚)していることを指します。いろいろある体質の中でも一番理解しにくいのがこの陰虚になります。
陰虚の熱は本当に体温が高い「実熱」ではなく、「虚熱」です。水が入った鍋を強火にかけるのが体温の高い状態。一方、火加減は普通でも中の水が少なくなり、鍋が熱くなっている状態が陰虚です。
舌をみると赤く、苔もなくてツルツルしています。やせ型の人に多く、乾燥肌でほてりを伴います。体の潤いが減ってくることが原因のため、誰でも年齢とともに陰虚体質になりやすくなります。寝不足が続くと、肌が乾燥して化粧ノリが悪くなるように一時的に陰虚状態に陥ることもあります。
手足のほてりは「夜になると」というのがポイント。日中よりも夜になるとほてりが強くなるという特徴があります。東洋医学では森羅万象あらゆるものを陰と陽に分けて考えます。昼は陽、夜は陰にあたります。体は陰陽のバランスが保たれていることが良いとされ、陰が不足していると夜に症状が出やすくなるのです。
陰虚には体の潤いを補うものが用いられ、手足のほてりには「知柏地黄丸(ちばくじおうがん)」を用います。