漢方コラム
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Vol.72 腹部膨満感 〜お腹が張って苦しい〜
お腹が張って苦しい、ガスがたまる、といった症状は、背景に胃腸の病気や婦人科の病気があることもありますが、検査しても特に異常がないという場合でもよくみられ
ます。大きな病気がない場合のお腹の張りには漢方薬が有効です。お腹が張る原因はいくつも考えられます。
@食べたものがうまく消化されずに胃腸の中にたまった状態を食積(しょくせき)といいますが、食積が慢性化すると腸の中にガスが溜まります。生ごみを夏場外に置いておくとすぐに腐敗するのと同じように、胃腸に溜まった食べカスは体内の温度で腐敗し、ガスが発生します。おならは臭く、便秘、ゲップなどを伴うこともあります。この場合はしばらく胃腸を休ませることも重要。消化を助ける『晶三仙(しょうさんせん)』、腸内環境をよくする『五行草(ごぎょうそう)』などは胃腸の掃除をしてくれます。
Aストレスでも腹部の張りがみられることがあります。人により、必ずしもストレスを自覚しているとは限らず、漢方では「気の巡りが悪くなっている状態」を指します。これを「気滞(きたい)」といい、気滞によるお腹の張りの場合、あまりおならは臭わず、女性の生理前などにもよくみられます。この場合は『開気丸(かいきがん)』という漢方薬が用いられます。
B胃腸が弱く冷えやすいタイプにもお腹の張りがみられることがあります。お風呂に入ってお腹が温まるとガスが出るタイプです。元々胃腸が弱く、下痢、便秘がちで、冷たいものを好み胃腸が冷えている人にもよくみられます。この場合『桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)』が用いられます。
どのタイプも食事はよく咀嚼(そしゃく)し、脂っこいものや甘いもの、冷たいものを控え、食べすぎに注意しましょう。