漢方コラム
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Vol.314 胃腸の働きをよくし生命力高める
近年、腸が脳に指令を送っていることや、感染症予防、アレルギーなどあらゆる面で腸が健康の要だということが分かってきています。東洋医学でも「五臓の中心は胃腸」とみているため、婦人病や不眠、メンタルの不調、皮膚病など、一見胃腸とは関係なさそうな症状にも胃腸に働きかける漢方薬を用いることがあります。
例えば、子供の夜泣きや癇癪(かんしゃく)に使う漢方薬には神経を落ち着かせる生薬だけではなく、胃腸の働きを高めるものが用いられています。子供は五臓の中で肝と心が亢進しんし、消化器と呼吸器が弱いという傾向がありますが、癇の強い子は細身の子が多く、胃腸が弱いために、余計に肝や心が亢進しやすいと言えます。
胃腸が弱い人は大人も子供も物事に敏感、神経が細かい、くよくよ悩みやすい、物事を考えすぎてしまうという傾向がありますが、胃腸が弱いと腸でビタミンの合成がされにくい、またミネラルの吸収が十分でないために血液が作られにくく血虚(貧血だけではなく隠れ貧血も指す)になることも深い関係があります。
血液不足は脳の血流が低下しやすいため不眠や多夢、不安感、イライラなどとも関係が深く、生理前の不眠やイライラにも背景に血液不足がないかみていくことは重要です。
漢方の胃腸薬は胃腸の働き自体を高めるため、もたれやすい、膨満感など胃腸症状の改善の他、血色がよくなる、疲れにくくなるなど体質が変わっていく点が特徴です。
胃腸の働きのことを五臓では「脾(ひ)」といいますが、「ひよわ」という言葉があるように、脾の働きを高めることは生命力を高めることにつながります。