漢方コラム
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Vol.151 お酒は少量嗜めば薬に?!
お酒は悪者のイメージがあるかもしれません。皮膚病やアレルギー、生活習慣病などの相談の際は「お酒は控えてくださいね」というお話をします。しかし、お酒は摂り方によって薬にもなります。少量を嗜(たしな)めば気の巡りを良くし、血行促進の働きがあるため「百薬の長」ともいわれています。薬酒があるように、お酒は薬草の水溶性成分も脂溶性成分も抽出することができます。胃の粘膜を刺激するため、薬の効きを良くする目的で漢方では昔から薬として用いられてきた歴史があります。冷えからくる疾患に用いる処方、例えば 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や八味地黄丸(はちみじおうがん)〞などはお酒で服用した方が良いとされています。「じゃあ、毎日晩酌するからその時に漢方を飲めばいいのか」ということではありません。全ての疾患や漢方薬に適しているのではなく、冷たいビールでは効果は期待できません!
昔はお正月に無病息災を願って「お屠蘇(とそ)」を飲む習慣がありました。屠蘇に使われる生薬は地域や家庭により違いはありますが、トリカブトの根である烏頭(うず)、山椒、防風、白朮(びゃくじゅつ)、大黄、桔梗、陳皮、桂皮などが用いられていたようです。これらの生薬を大みそかの正午にくみ上げた井戸水に沈めておき、元旦に取り出してお酒に浸して飲んだり、煎じたり煮出したりする家庭もあったようです。構成からみると、健胃作用や風邪予防に効果があり、この季節にピッタリの「先人の知恵」だったのです。