漢方コラム
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Vol.47 気分の落ち込み、不安感、不眠など
怖い体験をすると背中がゾクゾクとして体に寒気が走ります。これを利用した『胆だめし』は日本の夏に欠かせないものです。では、なぜ「胆」という言葉が使われているのでしょう? 他にも「胆(きも)を冷やす」、「胆をつぶす」「胆が据わっている」など胆〞に関する言葉はたくさんあります。
《自律神経や情緒にも影響!規則正しい生活を》
中国伝統医学では、ビクビクして怖がる、不安感がある、決断に迷うといった精神の状態を「胆寒(たんかん)」といいます。五臓六腑でいう肝胆系は、現代医学の肝臓や胆のうなどの働きの他に、自律神経系や精神情緒などとの関わりが深いと考えられています。
人間の精神状態を指す言葉に「胆」が使われるのも、ここからきているのかもしれません。精神的に不安定になることで、▼気持ちが落ち込む、▼不安感がある、▼眠れない―という症状があるとき、漢方薬では「温胆湯(うんたんとう)」を処方をします。胆を温めると書きますが、本当に温めるということではなく、強くする〞という意味です。温胆湯は昔から不安神経症や不眠症の薬として重宝されてきました。
舌を診ると、以下のような体質の人が多いようです。▼舌にべっとり苔がついている、▼その苔が黄色っぽい、▼口が苦い、▼胸悶感−など。このような症状がある人に「温胆湯」を使います。生活面では、@朝はきちんと起きる、A夜は早く寝る、B正しい食事をして適度に動く、このようなごく当たり前のことを指導します。体のバランスを整えることが精神の健康にも不可欠なんですよ。